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2019年09月04日

コラム/最適物流の科学㉒

最適物流の科学

 

弊社社長の菅が、2017年12月に『最適物流の科学―舞台は36106万平方km

海を駆け巡る「眠らない仕事」』という書籍を出版しました。

 

そこで、本ブログでも、その書籍から抜粋した内容を

毎週1話ずつ、ご紹介していきたいと思います。

 

第二十に回となる今回は、「海運の安全安心神話を検証する」というテーマでお話しいたします。

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「大手海運企業破綻にみる正しい処方せん」

 

船会社とフォワーダーのいずれに委託しても、万が一の場合の補償に違いはありませんが、過去にはこれが大きな違いとなって現れたケースがあります。それは、二〇一六年八月に起きた韓国の大手海運会社、韓進海運の経営破綻です。コンテナ船の運航船腹量で世界のトップ一〇に入っていた同社の破綻は関係者に衝撃を与えただけでなく、業界に大きな混乱を引き起こしました。同社が裁判所に法定管理(会社更生法に相当)を申請した時点で、同社の船舶数十隻(同年九月六日時点で六八隻)が貨物を積んで世界各地を航行中でした。ところが、このニュースが各地へ伝わると、荷揚げ先となる港は現金での入港料支払いを要求したのです。これは事実上の入港拒否でした。

すでに入港した船舶についても、荷役の現金払いを要求されるなど、韓進海運が請け負っていた貨物の動きは完全にストップしてしまいました。日本近海でも、横浜港や名古屋港から入港を拒否された船舶が沖待ちを強いられる状態になりました。

荷主らにとって、これはまったく想定外の出来事でした。韓進海運の経営状態が良くないという事実はすでに広く知られていましたが、実際のところ、赤字経営に苦しんでいたのは韓進海運に限ったことではありません。

現在も多くの船会社が経営的に厳しい状況にあります。破綻の可能性があったとはいえ、貨物が途中で動かなくなる事態までは予測できませんでした。韓進海運の船に貨物を載せていた荷主は、その後の対応を迫られました。

この時、荷主がフォワーダーを通して韓進海運の船に貨物を載せていたケースでは、その対応はフォワーダーが行ないました。フォワーダーは自社のネットワークを駆使し、代替船を探して貨物を移し替え、目的地へと送りました。当然のことではありますが、フォワーダーは委託を受けた側の責任において、荷主に費用負担を求めることなく、最後まで輸送責任を全うしたのです。

当社も、その当時、ある工作機械メーカーの貨物を韓進海運の船を使って運んでいました。日本からインドに向けての輸送途中のタイミングで破綻となったため、当該貨物は韓国の釜山(プサン)港で輸送が打ち切られてしまったのです。

そこで当社は急遽、釜山から目的地のインド・ナバシェバ (Nhava Sheva)を結ぶレスキュー船を手配しました。この時は追加費用が一〇〇万円ほどかかりましたが、フォワーダーとしての輸送責任がありますので、費用はすべて当社が負担しました。レスキュープランによって約一カ月遅れの納品となりましたが、幸い貨物にダメージはなく、遅延以上のトラブルはありませんでした。

一方、韓進海運と直接契約していた荷主は、自らこれを行なわねばならなくなりました。別の船会社を探し、あらためてそこへ貨物を委託するのです。しかし、荷主が何社もの船会社に問い合わせをかけ、都合に見合った船を見つけるのは容易ではありません。結果として、多くの荷主がフォワーダーを頼りました。

今回の出来事においては、結果として韓進海運と直接契約した荷主よりもフォワーダーを利用した荷主の方が、その後の手間を省くという点で大きなメリットを享受できました。こうしたケースは極めて稀ではありますが、フォワーダーを通したことがある種のリスクヘッジに繫がったというのは事実です。

 

 

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つづく。

次回は、「フォワーダーの優位性は、国際複合一貫輸送でより鮮明に」というテーマでお話しいたします。

 

ご興味を持っていただけた方、続きを一気にご覧になられたい方は、ぜひアマゾンでお求めください♪

最適物流の科学――舞台は36106万平方km。海を駆け巡る「眠らない仕事」

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投稿者

ジャパントラスト株式会社 

 


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