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2019年09月18日
コラム/最適物流の科学㉔
最適物流の科学
弊社社長の菅が、2017年12月に『最適物流の科学―舞台は3億6106万平方km。
海を駆け巡る「眠らない仕事」』という書籍を出版しました。
そこで、本ブログでも、その書籍から抜粋した内容を
毎週1話ずつ、ご紹介していきたいと思います。
第二十四回となる今回は、「海も陸も、スムーズな連携で荷物を目的地へ」というテーマでお話しいたします。
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「事例から知る緊急対応時の力量」
国際複合一貫輸送では、複数の輸送モードを組み合わせることで目的地へのドア・ツー・ドアを実現します。異なるモード間の連携も重要ですが、場合によっては新たなルートを構築して輸送する必要が出てくるケースもあります。イレギュラーな事態には事業者としての力量が問われ、その状況へ即応できる柔軟な対応力が求められます。弊社で実際に経験した事例から紹介してみましょう。
それは二〇一四年末から二〇一五年にかけて起きたアメリカ港湾ストライキで、米国西岸の港ではすべての機能がストップしてしまいました。弊社では北米への貨物輸送を数多く受注していますので、西岸の港でストライキが起きたとの情報を入手すると、すぐに代替手段を検討しました。そこで取った対応策は、メキシコ経由で貨物を輸送するという独自の運送サービスです。弊社はメキシコ国内の運送会社と組み、メキシコの港を使って北米全土へ内陸輸送をする作戦を展開しました。この時、北米西岸の港は軒並み機能停止状態にありましたが、メキシコ国内の港では通常のオペレーションが行なわれており、滞りなく貨物が動いていた事実に着目したのです。弊社は早速このサービスをお客様へ提案しました。
その具体的な輸送モードは、メキシコのエンセナーダ(Ensenada)港を拠点とし、そこで日本からの貨物を引き受けてアメリカ全土へ運送するというものです。この港は、ストライキで麻痺しているカリフォルニア州のロサンゼルス港・ロングビーチ港から南へ約四二〇㎞、両国国境を隔ててすぐのところに位置しています。
二〇一五年当時、メキシコ向けの海上運送サービスは、アジア各地の港を経て、アジアのラストポートとして日本へ寄り、その後エンセナーダ港、続いてマンサニヨ(Manzanillo)港へと向かうルートをたどっていました。当時のリードタイム(行程の着手から完了までに要する時間)は、名古屋からエンセナーダまでが約一九~二〇日、マンサニヨまでが約二〇~二一日、横浜からエンセナーダまでが約一二日、マンサニヨまでが約一四日でした。
メキシコ航路を利用する大きな決め手となったのが、リードタイムの遵守率の高さです。この点はサービスを展開する上で非常に重要な点でした。
ただ一方で、メキシコで貨物を降ろす計画に懸念を抱かれたお客様も少なくありませんでした。そうした不安を払拭するため、弊社は詳細な現地情報を適宜、お客様に提供することで対応しました。弊社ではかねてよりこの地域にスペイン語が話せる専任担当者を設け、現地調査を独自に行なってきました。現地の物流に関する情報を運送業者や通関業者から集め、このサービスの確実性や安全性を十分に確認していたのです。そうした積み重ねのおかげで、お客様の疑問に自信を持って答えながら、サービスの提案を進めていきました。
メキシコの港では近年、通関のシステム化が積極的に進められ、輸入申告、港湾諸費用納付、関税の納税・減税・免税、国内運送の実施の仕組みがかなりの部分で改善されました。これは、メキシコ政府が二〇一〇年前後から積極的な外資系企業誘致に乗り出すにあたって行なった改革によるものです。二〇一五年当時、メキシコの港の仕組みが成熟期へ向かっていた点も、弊社にとっては幸いだったかもしれません。メキシコを経由するこの独自のサービスは、コンテナ一本当たり一万ドルを超える費用がかかったにもかかわらず、多くのメーカー(荷主)様から引き合いをいただき、多数の貨物を輸送するに至りました。
通常の運賃に比べると非常に高額ではありますが、ストライキ当時は北米へのもっとも安い輸送ルートでした。これ以外では、航空便(船舶の一〇倍以上の運賃)しか方法がなかったのです。
当時引き受けた品物は、アメリカ国内で生産中の自動車関連の部品や鋼材が大半を占めていました。
これらは自動車を生産する上で重要な供給品であり、これを欠いては産業そのものが成り立たなかったのです。このサービスでは、実際の運送に際して遅延もなく、予定通りの日程ですべての配送を完了させることができました。
この事例のように、さまざまなルートの中から最適なものを選択し、迅速に新たなサービスを構築できるという点は、フォワーダーの強みといってもよいでしょう。
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つづく。
次回は、「複雑な流れをプロフェッショナルがサポート」というテーマでお話しいたします。
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最適物流の科学――舞台は3億6106万平方km。海を駆け巡る「眠らない仕事」
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投稿者
ジャパントラスト株式会社