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2019年10月30日
コラム/最適物流の科学㉚
最適物流の科学
弊社社長の菅が、2017年12月に『最適物流の科学―舞台は3億6106万平方km。
海を駆け巡る「眠らない仕事」』という書籍を出版しました。
そこで、本ブログでも、その書籍から抜粋した内容を
毎週1話ずつ、ご紹介していきたいと思います。
第三十回となる今回は、「見極めポイント② 船会社との幅広いネットワーク力が生きる」というテーマでお話しいたします。
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「海運業界の各方面との関係構築がフォワーダーの強みになる」
海運業界の各方面との関係構築がフォワーダーの強みになる
国際物流業者を選ぶ基準の二つ目に挙げられるのが、船会社とどれだけネットワークを構築しているかという点です。
海上輸送を請け負う国際物流業者にさまざまなタイプがあることは先に見た通りです。ただ、実際に海上輸送を行なうことができるのは、当然ながら船舶を所有する船会社だけです。フォワーダーの業務も、船会社がなければ成り立ちません。
荷主の側から見ると、最終的に貨物が積まれるのは船会社の持つ船舶ではありますが、船会社に直に問い合わせても、そこでスペースが確保できるとは限りません。船会社の一社ずつに連絡を入れスペースの有無と運賃を確認するのは非常に効率が悪いことです。そこで活躍するのが、フォワーダーなど荷主と船会社を仲介する事業者です。この点は第二章で確認した通りです。
船会社との間を取り持つ企業が、船というハードを持つ代わりに必要とされるのが、船会社とのネットワークというソフトです。その幅が広いほど選択肢が増え、スペースを確保できる可能性が高くなります。つまり、いかに多くの船会社と密に関係を構築しているかが、事業者を選ぶ上での重要なポイントになるわけです。
ところで二〇一七年八月現在の段階で、一般社団法人日本船主協会の会員企業は一二三社となっています。日本船主協会とは、「一〇〇総トン以上の船舶の所有者、賃借人ならびに運航業者であって、日本国籍を有する者を会員とする全国的な事業者団体」です(同協会ホームページ)。ひと言で表せば日本の船会社ということになりますが、ここにはタンカーなどの不定期船を扱う企業や内航海運専門の企業も含まれています。この一二三社のうち、海外との間に定期航路を持つ企業は日本郵船、商船三井、川崎汽船です。この三社は、二〇一七年七月にコンテナ船事業を統合したため現在、外航コンテナ船を運航する日本の船会社は実質一社となっています。したがって海外への貨物輸送に際しては、外国の船会社を利用する機会も多くなります。
コンテナ船事業者のM&A(合併・買収)の動きは、日本のみならず世界的にも進んでいます。これに伴い、大手の船会社が業界で占めるシェアが拡大しています。二〇一六年五月末のデータでは、フルコンテナ船運航船腹量でトップを占めるのがデンマークのマースク・ライン(Maersk Line)、次いでスイスのMSC、フランスのCMA-CGMとなっています。この上位三社で、世界シェアの四割以上を占めています。これらに続くのが、中国遠洋海運集団(China COSCO Shipping Group)、ドイツのハパックロイド(Hapag-Lloyd)で、日本の三社が統合した新会社は世界第六位の規模になります。世界的な業界再編が進む中、国際物流業者はこれらの船会社と常にパイプを繫いでおくことが欠かせないのです。どの船会社が生き残るのか、どの船会社がスペースを供給できるのかはだれも予測できないので、荷主の代わりに全ての船会社と定期的に会合をするなどして、関係を深めて、荷主のほしい生の情報を収集することがフォワーダーの重要な役割です。
場合によっては、船会社だけでなく同業者との関係性を築いておくことも必要です。中小の事業者ならではのことですが、同業者間で実際にスペースを融通し合う場合もあります。また、フォワーダーの中には、日本と特定地域を結ぶ航路で高いシェアを誇る企業があります。世界規模で営業している海外の大手フォワーダーもあります。そうした事業者ともネットワークを構築していれば、大きな強みになるでしょう。ライバル事業者に声をかけてまでスペースを押さえようとするのは、節操がないと思われるかもしれません。しかし、荷主の利益を第一に考え、何としてでもスペースを確保するという方針を貫くのであれば、そうしたやり方も決して否定されるものではないのです。
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つづく。
次回は、「見極めポイント② 船会社との幅広いネットワーク力が生きる」というテーマでお話しいたします。
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最適物流の科学――舞台は3億6106万平方km。海を駆け巡る「眠らない仕事」
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投稿者
ジャパントラスト株式会社