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2019年11月13日
コラム/最適物流の科学㉜
最適物流の科学
弊社社長の菅が、2017年12月に『最適物流の科学―舞台は3億6106万平方km。
海を駆け巡る「眠らない仕事」』という書籍を出版しました。
そこで、本ブログでも、その書籍から抜粋した内容を
毎週1話ずつ、ご紹介していきたいと思います。
第三十二回となる今回は、「見極めポイント③ ニュートラルな立場で顧客第一を貫けるか」というテーマで「親会社との関係がもたらす利点」をお話しいたします。
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「親会社との関係がもたらす利点」
国際物流業者を選ぶ基準の三つ目として挙げられるのが、ニュートラルな立場にある会社か否かという点です。これについては、単にグループ会社と独立系の会社のいずれが良いかということではなく、荷主が実際に事業者を利用する際、デメリットを避けるためのポイントとして理解していただければと思います。
国際物流に携わる企業が集まる業界団体に、一般社団法人国際フレイトフォワーダーズ協会があります。この団体は一九八一年に任意団体として設立され、一九八五年に社団法人として発足しました。現在、ここに加盟している正会員は四八八社です(二〇一七年九月、同協会ホームページ)。
そのリストに記載されている社名を見ていくと、船会社、倉庫会社、商社、メーカーなど、大手企業のグループ会社が多いことが見て取れます。もちろん、社名に親会社の名を冠していない子会社もあります。いずれにせよ、大手企業と結びついた事業者が多い傾向は、本章第1節で見た分類からもわかるでしょう。
大企業と資本関係がある場合、経営上さまざまなメリットを得ることができます。まずバックに親会社がついているので、経営が安定する点が挙げられます。情報・ノウハウ・ネットワークを共有できることも大きな強みです。親会社を通して人材の育成・確保もしやすくなります。
親会社に知名度があれば、その看板を使って営業ができるという点もメリットといえるでしょう。実際に営業活動をする際、知名度の有無がスタート地点で大きな差となります。名刺に大手企業の系列であることがわかる社名が書かれていたり、有名企業グループのマークが入っていたりするだけで、相手はプラスの印象を持ってくれます。
そうでない会社はまず、自社の紹介からスタートせねばなりません。無名企業では、「おたくは何屋さん?」という質問に対する説明から始めなければならないというハンディキャップがあるのです。
また船会社の子会社であれば、親会社が持つスペースを優先的に確保できます。グループ内に倉庫会社がある場合も同様に、倉庫の使用に際して優先的な立場を得られるでしょう。先に述べた通り親会社が商社やメーカーであれば、親会社あるいは関連会社で扱われる商品の輸送という業務を丸ごと請け負うことができます。特にメーカー系の物流業者の場合では、元々は社内の物流部門から独立した経緯もあり、大半は親会社の商品輸送を主業務とし、収益は比較的安定しています。
「Benefits from relationship with parent company」
The third criteria for selecting an international logistic company is whether the company is in a neutral position or not. The question is not just which, a group company or an independent company, is better. My point is meant to avoid disadvantage when the shipper actually uses a business operator.
Japan International Freight Forwarders Association Inc. is an industry group that consists of companies engaged in international logistics. This group was founded as an arbitrary organization in 1981 and was established as an incorporated corporation in 1985. Currently, 488 companies are affiliation regular members. (September 2017, Japan International Freight Forwarders Association Inc. website).
Looking at the company names listed on this list, we can see that there are many group companies of major companies. They are shipping companies, warehouse companies, trading companies and manufacturers. Of course, there are some subsidiary companies that do not show the parent company name in their name. In any case, you can see the trend that there are numerous businesses connected with major companies from the classification in the first section of this chapter.
When a company has a capital relationship with a major company, It can enjoy various merits in terms of management. First of all, the management stability thanks to the support of the parent company can be pointed out. It is also a great advantage that they can share information, know-how and networks. Training and securing manpower is also easier through the parent company.
It is an advantage that the company can operate sales using the parent company’s name if the parent company is well known. In conducting sales activities, whether the company’s name is well known or not makes a big difference at the start point. The company name that is recognized as a line of a major company si very beneficial. The major company’s group mark on the business card can give very positive impressions.
Companies that are not backed up by a major company need to start with their self-introduction. If the company is anonymous, it has to start with the handicapped disadvantage that they must first explain who they are, responding to the question that “what business do you do?” Also, if the company is a subsidiary of a major shipping company, it can preferentially secure the space owned by the parent company. Likewise, if there is a warehouse company in the group, the company will be able to use a warehouse on a priority basis. As mentioned earlier, if the parent company is a trading company or manufacturer, the company can undertake the entire transporting business of the goods handled by the parent company or affiliated company. Especially in the case of a logistics company of a manufacturer field, a subsidiary originally used to be a logistic department of its parent company before becoming independent. Therefore the revenue is relatively stable by doing the dependable business of parent company’s product transportation.
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つづく。
次回は、「資本関係がないからこそ利く「自由」がある」というテーマでお話しいたします。
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最適物流の科学――舞台は3億6106万平方km。海を駆け巡る「眠らない仕事」
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投稿者
ジャパントラスト株式会社
2019年11月06日
コラム/最適物流の科学㉛
最適物流の科学
弊社社長の菅が、2017年12月に『最適物流の科学―舞台は3億6106万平方km。
海を駆け巡る「眠らない仕事」』という書籍を出版しました。
そこで、本ブログでも、その書籍から抜粋した内容を
毎週1話ずつ、ご紹介していきたいと思います。
第三十一回となる今回は、「見極めポイント② 船会社との幅広いネットワーク力が生きる」というテーマで「最後の決め手は人間対人間」をお話しいたします。
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「最後の決め手は人間対人間」
国際物流業者にとって、船会社との幅広いネットワークは不可欠な要素ですが、ただパイプがあればよいというわけではありません。その太さも重要なのです。たとえば、船にコンテナ一本分のスペースだけが残っていたとします。このとき、船会社には複数の国際物流事業者から問い合わせがありました。では、船会社は何を基準に残った一本分のスペースを提供するでしょうか。
さまざまな要素が考えられますが、最終的には企業と企業を結ぶパイプが太いか細いかによって決まります。
「荷主だからお客だからと普段えらそうでこまった時だけ頭を下げてくる」。
「過去に取引をしたことはあるけれど、担当者と顔を合わせたことがない」。
そういったマイナスの印象を船会社に与えている事業者は選ばれる可能性が低いと考えられます。
「あの事業者は以前、大量にあった空きスペースを埋めてくれた」。
「あの会社の担当者とは定期的に食事の機会を設けてもらって、常に情報交換してくれる」。
「あそこの社長は自ら、海外の本社まで訪問してくれた」。
このような良い印象がある事業者は、相手の会社に選ばれる可能性が高いといえるでしょう。つまりフラットな立ち位置にある複数の会社の中から一社を選ぶことを求められた場合、結局は船会社が事業者に対して抱く印象が大きな判断要素となるということです。担当者も結局は人間です。
ちょっとした印象の差が取引を左右する場合もあるのです。もちろん、これは海運業界に限ったことではなく、どこの世界でも見られることでしょう。企業同士を繫ぐパイプの太さとは、担当者間のパイプの太さでもあるのです。
常識的な範囲であれば、〝船会社と物流業者の担当者は頻繁に交流すべきでない〟という考え方があります。金額や実績といった数字で測れる要素でプラスの印象を持ってもらうことも重要ですが、人間関係の中でパイプを太くしていくのも大切です。営業という枠を超えて、ともに海運業に携わるパートナーとして情報交換などを進めるのは、双方にとって有益です。昨今は、こうした営業スタイルに否定的な考えを持つ方も少なくありません。業種を問わず、IT化、効率化、経費節減といったことが叫ばれていますが、営業、特にスペース確保においてはアナログ的な手法も重要ではないかと思います。そういったことがひいては荷主の要望に応えていくことになります。
「The final decisive factor is human-to-human dealing」
For international logistics carriers, a wide network with shipping companies is an essential element. However, it does not mean they are OK as long as they are connected. How wide their connections are also important. For example, suppose only one container space is left on the ship. In such a case, if the shipping company receives inquiries from several international logistics companies, what is a criteria of the shipping company in providing the last one container space?
Various factors will be considered, but the final key factor is how strong the connection between the companies.
“He shows no respect in a normal situation because his company is a shipper. He begs us to help only when his company is in trouble.”
“We have traded in the past, but we have never met face to face with the person in charge.”
I believe the businesses that give such a negative impression to the shipping company is less likely to be chosen. “That company was conscientious enough to fill in the big empty space in the past.”
“We have supper opportunities regularly with the person in charge of that company, and we always exchange information.” “The president of that company himself has visited our overseas headquarters.”
The company that gave such a good impression is likely to be chosen at a crucial moment. In other words, when people have to choose one company out of several, especially when there are no big differences among them, the company’s past impressions will be a big judgment factor at the end for the shipping company. After all, the person in charge is a human being.
There is a case where the slight impression differences affect the decision-making. Of course, this is not limited to the shipping industry. It can be seen anywhere in the world. The strength of the connection between companies also means the strength of the connection between the persons in charge.
Within the framework of the common sense, there is a notion that “the person in charge of shipping company and logistic company” should not inter-connect frequently”. It is important to give the positive impressions by the measurable factors like “amounts or actual records”, but it is also important to make a connection stronger in human-to human relations. It is beneficial for both sides to promote information exchange beyond the framework of the operation as partners involved in the same shipping industry. In recent years, there are some people who have negative views on this sales style. IT, improve efficiency improvement and cost reducing are stressed in every industry these days. However I believe the analog method is also important in the sales field, especially space securing. That will eventually lead to responding to the shipper’s .
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つづく。
次回は、「見極めポイント③ ニュートラルな立場で顧客第一を貫けるか」というテーマでお話しいたします。
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ジャパントラスト株式会社
2019年10月30日
コラム/最適物流の科学㉚
最適物流の科学
弊社社長の菅が、2017年12月に『最適物流の科学―舞台は3億6106万平方km。
海を駆け巡る「眠らない仕事」』という書籍を出版しました。
そこで、本ブログでも、その書籍から抜粋した内容を
毎週1話ずつ、ご紹介していきたいと思います。
第三十回となる今回は、「見極めポイント② 船会社との幅広いネットワーク力が生きる」というテーマでお話しいたします。
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「海運業界の各方面との関係構築がフォワーダーの強みになる」
海運業界の各方面との関係構築がフォワーダーの強みになる
国際物流業者を選ぶ基準の二つ目に挙げられるのが、船会社とどれだけネットワークを構築しているかという点です。
海上輸送を請け負う国際物流業者にさまざまなタイプがあることは先に見た通りです。ただ、実際に海上輸送を行なうことができるのは、当然ながら船舶を所有する船会社だけです。フォワーダーの業務も、船会社がなければ成り立ちません。
荷主の側から見ると、最終的に貨物が積まれるのは船会社の持つ船舶ではありますが、船会社に直に問い合わせても、そこでスペースが確保できるとは限りません。船会社の一社ずつに連絡を入れスペースの有無と運賃を確認するのは非常に効率が悪いことです。そこで活躍するのが、フォワーダーなど荷主と船会社を仲介する事業者です。この点は第二章で確認した通りです。
船会社との間を取り持つ企業が、船というハードを持つ代わりに必要とされるのが、船会社とのネットワークというソフトです。その幅が広いほど選択肢が増え、スペースを確保できる可能性が高くなります。つまり、いかに多くの船会社と密に関係を構築しているかが、事業者を選ぶ上での重要なポイントになるわけです。
ところで二〇一七年八月現在の段階で、一般社団法人日本船主協会の会員企業は一二三社となっています。日本船主協会とは、「一〇〇総トン以上の船舶の所有者、賃借人ならびに運航業者であって、日本国籍を有する者を会員とする全国的な事業者団体」です(同協会ホームページ)。ひと言で表せば日本の船会社ということになりますが、ここにはタンカーなどの不定期船を扱う企業や内航海運専門の企業も含まれています。この一二三社のうち、海外との間に定期航路を持つ企業は日本郵船、商船三井、川崎汽船です。この三社は、二〇一七年七月にコンテナ船事業を統合したため現在、外航コンテナ船を運航する日本の船会社は実質一社となっています。したがって海外への貨物輸送に際しては、外国の船会社を利用する機会も多くなります。
コンテナ船事業者のM&A(合併・買収)の動きは、日本のみならず世界的にも進んでいます。これに伴い、大手の船会社が業界で占めるシェアが拡大しています。二〇一六年五月末のデータでは、フルコンテナ船運航船腹量でトップを占めるのがデンマークのマースク・ライン(Maersk Line)、次いでスイスのMSC、フランスのCMA-CGMとなっています。この上位三社で、世界シェアの四割以上を占めています。これらに続くのが、中国遠洋海運集団(China COSCO Shipping Group)、ドイツのハパックロイド(Hapag-Lloyd)で、日本の三社が統合した新会社は世界第六位の規模になります。世界的な業界再編が進む中、国際物流業者はこれらの船会社と常にパイプを繫いでおくことが欠かせないのです。どの船会社が生き残るのか、どの船会社がスペースを供給できるのかはだれも予測できないので、荷主の代わりに全ての船会社と定期的に会合をするなどして、関係を深めて、荷主のほしい生の情報を収集することがフォワーダーの重要な役割です。
場合によっては、船会社だけでなく同業者との関係性を築いておくことも必要です。中小の事業者ならではのことですが、同業者間で実際にスペースを融通し合う場合もあります。また、フォワーダーの中には、日本と特定地域を結ぶ航路で高いシェアを誇る企業があります。世界規模で営業している海外の大手フォワーダーもあります。そうした事業者ともネットワークを構築していれば、大きな強みになるでしょう。ライバル事業者に声をかけてまでスペースを押さえようとするのは、節操がないと思われるかもしれません。しかし、荷主の利益を第一に考え、何としてでもスペースを確保するという方針を貫くのであれば、そうしたやり方も決して否定されるものではないのです。
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つづく。
次回は、「見極めポイント② 船会社との幅広いネットワーク力が生きる」というテーマでお話しいたします。
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投稿者
ジャパントラスト株式会社
2019年10月23日
コラム/最適物流の科学㉙
最適物流の科学
弊社社長の菅が、2017年12月に『最適物流の科学―舞台は3億6106万平方km。
海を駆け巡る「眠らない仕事」』という書籍を出版しました。
そこで、本ブログでも、その書籍から抜粋した内容を
毎週1話ずつ、ご紹介していきたいと思います。
第二十九回となる今回は、「見極めポイント① 海外拠点(現地法人・海外代理店の保有)は豊富か」というテーマでお話しいたします。
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「海外代理店への業務委託を成功させるためには」
海外に現地法人や合弁会社を設け、そこに日本人スタッフを多く配置し、自社で所有する輸送手段を用いて貨物を運搬するようにしたら、国内と同じようなサービスを海外でも展開できます。ただ世界各地でそうした体制を整えるのは容易ではありません。拠点整備のために莫大な投資が必要となります。整備した後は維持費、人件費、運営コストもかかります。また現地で特定ルートから入ってくる貨物だけを扱う状態が続くと、競争意識の喪失へと至る恐れもあります。他社の動向を意識しなければ井の中の蛙になり、結果として、高止まりしたコストが運賃に上乗せされます。これでは荷主にとっては逆にデメリットになってしまいます。
コストだけを考えれば、現地法人や合弁会社を設立することはあまり得策とはいえません。現地の代理店(Agent)に任せた方が、大幅にコストは下げられるでしょう。しかし先の事例で見た通り、海外の現地スタッフが日本側の意向に沿って動いてくれるとは限りません。貨物のコントロール、トラブルが起きた場合の対応にも不安が残ります。
現地の代理店の利用にもさまざまな課題がありますが、そうしたデメリットを極力減らしながら活用する方法もあります。その一つが、複数の代理店の間で競争原理を働かせる方法です。大手の代理店一社にすべてを任せるのではなく、あえて複数の中小代理店に委託する体制を採用するのです。常に複数社の中で競わせる形を取り、自前で現地法人を設けるよりより良いコストやサービスを引き出します。
トラブル時の対応については、その代理店が日本企業に近いマインドを持っているかどうかがポイントとなります。弊社では各国で、何十社と使ってみて、日本人的マインドを持った優良代理店のみをトーナメント方式で残し、さらに日々競争させてます。
たとえ海外に代理店しかない場合でも、その運用いかんによっては、現地法人や合弁会社を持つ企業よりも安く円滑に貨物を送ることができるという点も押さえておきたいところです。
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つづく。
次回は、「見極めポイント② 船会社との幅広いネットワーク力が生きる」というテーマでお話しいたします。
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2019年10月16日
コラム/最適物流の科学㉘
最適物流の科学
弊社社長の菅が、2017年12月に『最適物流の科学―舞台は3億6106万平方km。
海を駆け巡る「眠らない仕事」』という書籍を出版しました。
そこで、本ブログでも、その書籍から抜粋した内容を
毎週1話ずつ、ご紹介していきたいと思います。
第二十八回となる今回は、「見極めポイント① 海外拠点(現地法人・海外代理店の保有)は豊富か」というテーマでお話しいたします。
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「増加する日本企業の海外拠点」
国際物流業者を選ぶ基準の一つ目に挙げられるのが、現地法人・海外代理店を持っているかどうかという点です。拠点を置く国・地域の多さはもちろん、その形態も重要なポイントとなります。
海外へ貨物を輸送する際、受ける側の国で対応してくれる事業者がいなければなりません。ドア・ツー・ドアの国際複合一貫輸送が当たり前になっている今日、物流業者の海外拠点の役割は非常に重要になっているといえるでしょう。中でも、三国間輸送の場合は、先に見た通り輸出国と輸入国の両方で物流拠点が必要となるため、特に重要なポイントとなります。
日本の国際物流業者の海外進出は近年活発化しています。コンテナ船が普及する前の一九六〇年代前半の段階では、日本の物流企業の海外拠点はごくわずかでした。しかしコンテナ化の進展に伴い、海外拠点は徐々に数を増やしていきます。現地法人の数は、一九八〇年代に一〇〇カ所を超えるとその後、急速に数を増やし、二〇一三年には一〇〇〇カ所に達するまでになりました。駐在員事務所も同様に、急速な増加傾向を見せています。
地域別で見ると、アジアが圧倒的な割合を占めています。特に中国は二〇一四年時点で進出企業数が一四七社で、現地法人数は三八五カ所となっています。また、これまではアジアと北米、欧州が中心でしたが、近年は中南米、大洋州、中近東、さらにはアフリカにまで拠点が広がりを見せていることも注目しておきたいところです(一般社団法人国際フレイトフォワーダーズ協会『我が国フォワーダーの海外進出状況と外国フォワーダーの日本進出状況』参照)。
物流企業が海外に進出するにあたっては、多くの場合、完全子会社もしくは合弁会社の形で現地法人が設立されます。また、駐在員事務所を置いて対応する場合もあります。この三つの形態のうち、完全子会社だけ、あるいは完全子会社に合弁会社や駐在員事務所を組み合わせた形で海外拠点とするケースが多くの割合を占めています。
完全子会社であれば進出企業側の意向に基づいてコントロールしやすいというメリットがあります。一方、合弁会社であれば、現地の事情に応じたノウハウを活用することができるというメリットがあります。同時に、その逆が完全子会社、合弁会社それぞれのデメリットということになります。各々に長所と短所があるため、海外拠点として完全子会社と合弁会社のいずれが良いかは一概にはいえません。また、駐在員事務所であればコストを抑えることはできますが、情報収集などの業務に限られるため、活動の幅を広げることができません。
拠点の形態や内実はさまざまですが、海外拠点の有無は、事業者を選ぶ上で重要なポイントになることは確かです。
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次回は、「見極めポイント① 海外拠点(現地法人・海外代理店の保有)は豊富か」というテーマでお話しいたします。
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2019年10月09日
コラム/最適物流の科学㉗
最適物流の科学
弊社社長の菅が、2017年12月に『最適物流の科学―舞台は3億6106万平方km。
海を駆け巡る「眠らない仕事」』という書籍を出版しました。
そこで、本ブログでも、その書籍から抜粋した内容を
毎週1話ずつ、ご紹介していきたいと思います。
第二十七回となる今回は、「荷主が知っておきたい海運会社の種別と特徴」というテーマでお話しいたします。
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「荷主が知っておきたい海運会社の種別と特徴 ~物流の依頼で押さえておきたい三つの基準」
前章では、国際物流に携わる事業者の中で、フォワーダーについて見てきました。第一章で紹介したように、海運業界にはこれら以外にも多様な企業があり、それぞれに特徴、長所・短所があります。
本章では、実際に海外に向けて貨物を輸送する場合を想定し、何を基準に事業者を選択すればよいかという視点から国際物流業者について掘り下げていきます。そこで国際物流会社を六つに分類し、各々のカテゴリに属する会社の特徴を確認します。その上で、海運会社を選ぶための具体的な基準について、荷主の立場から客観的に判断できる三つの項目を取り上げて考察していきます。
貨物の輸送を請け負う事業者は数多くありますが、それぞれ規模や特徴、得意分野が異なります。企業名も多種多様で、名前から業務内容を把握するのが難しいケースも少なくありません。ここでは、海外への貨物輸送を請け負う企業、中でも外航海運に携わる事業者を六つに分け、それぞれの強みと弱みを確認していきます。
説明に際しては、カテゴリ間の違いをできるだけ明確にするため、あえてマイナス面も強調する形で記しています。ただ、あくまでも全般的な傾向として述べたものですので、ここに明記された事柄がすべての企業に当てはまるというわけではありません。
①船会社
第一章で説明した通り、実際に船を所有し、それを運航する会社を指します。船舶以外にも、ターミナルやコンテナなどに膨大な投資をしているところが特徴です。また、世界中に広い支店網を持ち、全世界にサービスを展開しています。
船の運航が主業務なので、内陸輸送は海上輸送に付随する業務として請け負います。輸送以外の梱包、通関、バンニングなどは基本的に業務外となります。
自社船を使ったサービスの提供がベースとなるため、スケジュールの選択肢は、自社のサービスの範囲内に限定されます。したがって、基本的には自社船に空きスペースがない場合はブッキング(船腹予約)を受けることができません。一方で、自社船でサービスを提供しているので、スペースコントロールができるという強みがあります。スペースがタイトになった場合、自社のブッキングを優先し、フォワーダーなどからのブッキングを断ることもできます。
船会社が持つスペースの設定運賃は需給バランスで決定されるため、変動が大きくなることがあります。ただ大手の有名実荷主(商社、メーカーなど)に対しては、船会社間で激しい競争があるため、安値を提示する傾向もあります。そのため、荷主(ボリューム)によって運賃に差が生じます。
なお、近年は船腹の過剰供給によって運賃が歴史的な下落に見舞われています。船会社は経営規模の大きな企業ですが、そうした事情から厳しい経営を迫られています。
②乙仲、倉庫業者、通関業者
基本的に日本国内の作業がメインの物流業者で、通関、保管、国内配送、バンニング、梱包などを主な業務としています。国内物流を得意としており、トラックや自社倉庫などを保有する他、港湾の現場作業員も抱えています。貨物そのものを実際に手をふれて作業していることから、商品に関する豊富な知識が蓄積されている点も特徴です。
船は保有しておらず、海上輸送においては船会社の船腹を借りる利用運送となります。多くの船会社のサービスが利用できるとともに、自社で行なう国内作業から海上輸送までのスムーズな連携も可能です。また海上輸送を請け負った際は、荷主にとっては支払い窓口を一本化でき、一括で任せられるという利点があります。
ただ海上輸送は付帯サービスとなるため、船会社からの仕入れは専業フォワーダーよりも高くなる傾向があります。競合する他の乙仲へは営業に行くことができないため、集荷力は限定されています。また、海上輸送は収益の柱ではないため、本業である国内物流に比べると力の入れ方は弱くなります。国際複合一貫輸送についても、同様に国内作業に付帯的な位置づけとされる傾向があります。
③エアーフォワーダー
航空輸送がメインで、これを収益の柱としています。営業マンは航空輸送に関する知識が豊富で、その業務獲得に力を入れています。一方、海上輸送は本業ではないため、付帯的な位置づけとされる傾向があります。
海上輸送から航空輸送への急な切り替えが社内でできるため、この点に関しては柔軟に対応できます。ただ、航空輸送と海上輸送で担当者が違うことも多く、すべてのケースでうまく連携がなされるとは限らないという側面もあります。
全世界の主要都市に現地事務所と駐在員を置いているので、輸入国側で日本人スタッフによる均一なサービス、手厚いケアが受けられます。主要国には自社駐在員が複数名います。さらに、自社倉庫を世界中に所有しています。
そうした海外拠点を多く持つことは強みではありますが、同時に固定費が高くなるという点では弱みにもなります。また、現地で他のローカル代理店を使わないため、内陸輸送の費用・サービスにおいて競争原理が働きにくく、この部分の運賃に関しては高くなる傾向があります。競合する他のエアーフォワーダーへ営業に行くことができないという点では、集荷力は限定的です。
④大手外資系フォワーダー
国際的に運営されている外国資本の物流企業で、世界中で陸海空の物流業務を行なっています。自社の倉庫やトラックなどを保有する他、独自に開発したITシステムを駆使して、物流のコンサルタント業務も行なっています。
規模が巨大であるところが最大の特徴だといえます。日系フォワーダー業界一位の日本通運よりも大規模です。同様に世界を結ぶ自社ネットワークも、日系フォワーダーより広大です。後進国にも拠点が多くあり、世界各地に向けて比較的タイムリーに情報の伝達ができるので、荷主にとっては安心感があります。
一方で、外国の拠点に日本人スタッフが不足しているため、日本人のニーズに応じたケアを不得手とする傾向も見られます。また、現地で他の代理店を使わないため、サービスや内陸輸送費用の面で競争原理が働かないという側面もあります。
世界規模で取扱いボリュームが大きく、平均的にどのエリアにおいても競争力のあるレートを持っています。ただ日本のマーケットは世界全体で見ると非常に小さいため、それほど積極的に営業活動を行なっていません。日本支店は、海外からノミネーション案件があった際のケアがメイン業務となっています。
また、仕入れは海外で一括して実施しており、日本発の運賃交渉も国内では行なっていません。そのため日本発の運賃が高くなる傾向も見られます。
⑤商社・メーカー系フォワーダー
商社やメーカーの直接出資によって設立された物流企業で、いずれも親会社の直接出資比率の高いことが特徴として挙げられます。そのため、親会社から請け負った業務の売上高に占める割合も高くなっています。
船舶は保有しておらず、海上輸送では船会社の船腹を借りる利用運送となります。トラックや倉庫などのハードも所有していないところが多く、大半は外部に依存しています。
商社系フォワーダーは、世界中に親会社の幅広いネットワークを持つとともに、多くの輸送ノウハウも持っています。
メーカー系フォワーダーはメーカーの製品輸送に関するノウハウを持つとともに、メーカー依存度が高いため安定的に業務を請け負うことができます。また、いずれも親会社の知名度により、営業がしやすいことも強みといえます。
そうしたメリットがある反面、自社グループとの取引をメインとしているため、だまってても仕事が来るので、コスト競争力が高くないことがあります。また、親会社の扱う商品以外を輸送する経験が多くないため、他の分野の輸送を不得手とする場合が多く見られます。
親会社以外との取引を増やし、競争力を高めることが課題となっていますが、ライバル企業、他社グループとの取引ができないため、その営業範囲は限定されています。
⑥純粋フォワーダー(NVOCC)
倉庫、船などのハードを一切持たない利用運送業者で、海上輸送をメインの業務としています。ハードを所有していないので固定経費が少なく、利益が出る案件だけに注力・投資できると同時に、最適物流の提案ができるところが特徴です。乙仲、エアーフォワーダーなど、いろいろな事業者の貨物を集めているので、貨物量に伴う運賃交渉ができます。また特定の事業者を使わないといけないという縛りがありません。そのため、価格やサービスを基準に、ニュートラルに船会社を選定できることも強みです。
一方で、歴史が浅く経営規模も小さく、知名度の低い企業が多くを占めています。そうした事業者は一般的なイメージとしての信用度は船会社などに比べて高くありません。
フォワーダーには、一本のコンテナに満たない小口のブッキング(LCL)をメインとしている混載業者と、フルコンテナ(FCL)をメインとする事業者があります。このうち混載業者は、当然ながら混載貨物に力を入れているので、この分野では競争力があります。しかしFCLやオーバーゲージ、特殊コンテナについては付帯業務の位置づけで積極的には扱っていないため、運賃は高くなります。
一方のフルコンテナメインの事業者はこれとは逆で、フルコンテナの場合は安く、混載の場合は高くなります。ちなみに弊社は、これに当たります。(その中でも特に、北本発着FCL・全世界へのオーバーゲージを得意としてます)。
以上、国際物流業者を大きく六つに分類しました。では、それぞれの特徴を踏まえた上で、さらにその中から一社を選ぶ場合、どんな点に注目すればよいのでしょうか。次節からは、三つの項目から事業者を見極めるポイントを探っていきます。
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つづく。
次回は、「見極めポイント① 海外拠点(現地法人・海外代理店の保有)は豊富か」というテーマでお話しいたします。
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ジャパントラスト株式会社
2019年10月02日
コラム/最適物流の科学㉖
最適物流の科学
弊社社長の菅が、2017年12月に『最適物流の科学―舞台は3億6106万平方km。
海を駆け巡る「眠らない仕事」』という書籍を出版しました。
そこで、本ブログでも、その書籍から抜粋した内容を
毎週1話ずつ、ご紹介していきたいと思います。
第二十六回となる今回は、「三国間貿易はフォワーダーの得意分野」というテーマでお話しいたします。
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「船積書類の扱いにもきめ細かな配慮が求められる」
三国間貿易では、貨物、代金とともに、船積書類も三国間でやり取りされます。その際に気をつけねばならないのが、輸入者に仕入れ値が伝わらないようにすることです。
次のようなケースをイメージしてみてください。通信販売である商品を購入したとします。そのとき、送られてきた商品と一緒に仕入値が記載されている書類が入っていました。そこには、自分が販売店に支払った金額よりも大幅に低い金額が書かれていました。それを目にしたとき、皆さんはどう思うでしょうか。
マージンが上乗せされることはわかっていても、実際にその額を知ってしまうと複雑な思いを抱くはずです。場合によっては、もう二度とその業者から購入しないという決断をするかもしれません。販売者(仲介者)は、そうしたトラブルが起きないよう注意をする必要があるのです。
先にフォワーダーの業務のところで見たように、船積書類の中で金額が記載されているものはインボイスという書類です。インボイスは仲介者から輸出者へ、輸入者から仲介者へ、計二通が発行されます。
つまり、基本的に輸出者と輸入者は別のものを目にするわけですが、担当者の不注意で同じものが輸出者から輸入者に渡ってしまう可能性があります。輸出に際しては、仕入価格を記した前者のインボイスを使いますが、通関手続きの後、販売価格を記載した後者のインボイスに差し替えねばなりません。
こうした作業を円滑に行なうという意味でも、三国間貿易においてはフォワーダーなど輸出国と輸入国に拠点を持つ業者のサポートは必要不可欠なのです。もちろん委託を受けたフォワーダーには、仕入値だけでなく、必要のない情報が輸出者から輸入者へ漏れないよう注意する義務があります。
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つづく。
次回は、「荷主が知っておきたい海運会社の種別と特徴」というテーマでお話しいたします。
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投稿者
ジャパントラスト株式会社
2019年09月25日
コラム/最適物流の科学㉕
最適物流の科学
弊社社長の菅が、2017年12月に『最適物流の科学―舞台は3億6106万平方km。
海を駆け巡る「眠らない仕事」』という書籍を出版しました。
そこで、本ブログでも、その書籍から抜粋した内容を
毎週1話ずつ、ご紹介していきたいと思います。
第二十五回となる今回は、「海も陸も、スムーズな連携で荷物を目的地へ」というテーマでお話しいたします。
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「複雑な流れをプロフェッショナルがサポート」
国際複合一貫輸送と同様に、フォワーダーが力を発揮できる分野として、三国間輸送というものがあります。その名の通り、貨物の輸送に際して三カ国が関わるケースを指しますが、簡潔な例を使って説明しましょう。
たとえば、日本にあるA社に、アメリカのB社からある商品の発注がありました。ただA社はその商品を日本国内でなく、中国にあるC社の工場で委託生産しています。そこでA社は、中国のC社に連絡し、中国から直接アメリカのB社へ商品を発送するよう指示しました。
一方、この商品の代金は、アメリカのB社から日本のA社に支払われ、その後でA社から中国のC社に支払われます。つまり商品は中国からアメリカに送られ、代金はアメリカから日本、日本から中国へと送られるわけです。
このように三国の間で、モノとカネが異なるルートで動く貿易を「三国間貿易」といいます。また、このケースのA社のように、仲介者を挟んで貿易が行なわれることから「仲介貿易」とも呼ばれます。
前述の場合で、もし商品を中国から日本を経由してアメリカへ輸送したとすると、当然ながら時間もコストも余分にかかってしまいます。
経済のグローバル化によって海外に拠点を置く企業が増える中、外国との間で円滑に取引を進めるために三国間貿易は必要不可欠です。事実、複数の国にまたがる複雑な形の貿易は近年増加しています。
貿易取引においては、確実かつスムーズに商品の代金を回収することが欠かせません。 特に三国間貿易では、関係する三カ国に支店もしくは代理店が必要で、仲介者が確実に商品や書類の流れをコントロールする必要があります。また、三国間貿易では、仲介者が入ることで書類作成も複雑になります。中には、仲介者が二者存在するといったケースもあります。
こうした複雑な場面で、フォワーダーのようなプロフェッショナルの存在は欠かせません。世界各地に現地法人や代理店を持つフォワーダーは、輸出国と輸入国の双方に物流拠点を提供できる点が強みです。商品の輸送に際しては、顧客のニーズに応じて船を手配するとともに、書類や決済に関する業務をすべてワンストップで代行します。
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つづく。
次回は、「船積書類の扱いにもきめ細かな配慮が求められる」というテーマでお話しいたします。
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ジャパントラスト株式会社
2019年09月18日
コラム/最適物流の科学㉔
最適物流の科学
弊社社長の菅が、2017年12月に『最適物流の科学―舞台は3億6106万平方km。
海を駆け巡る「眠らない仕事」』という書籍を出版しました。
そこで、本ブログでも、その書籍から抜粋した内容を
毎週1話ずつ、ご紹介していきたいと思います。
第二十四回となる今回は、「海も陸も、スムーズな連携で荷物を目的地へ」というテーマでお話しいたします。
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「事例から知る緊急対応時の力量」
国際複合一貫輸送では、複数の輸送モードを組み合わせることで目的地へのドア・ツー・ドアを実現します。異なるモード間の連携も重要ですが、場合によっては新たなルートを構築して輸送する必要が出てくるケースもあります。イレギュラーな事態には事業者としての力量が問われ、その状況へ即応できる柔軟な対応力が求められます。弊社で実際に経験した事例から紹介してみましょう。
それは二〇一四年末から二〇一五年にかけて起きたアメリカ港湾ストライキで、米国西岸の港ではすべての機能がストップしてしまいました。弊社では北米への貨物輸送を数多く受注していますので、西岸の港でストライキが起きたとの情報を入手すると、すぐに代替手段を検討しました。そこで取った対応策は、メキシコ経由で貨物を輸送するという独自の運送サービスです。弊社はメキシコ国内の運送会社と組み、メキシコの港を使って北米全土へ内陸輸送をする作戦を展開しました。この時、北米西岸の港は軒並み機能停止状態にありましたが、メキシコ国内の港では通常のオペレーションが行なわれており、滞りなく貨物が動いていた事実に着目したのです。弊社は早速このサービスをお客様へ提案しました。
その具体的な輸送モードは、メキシコのエンセナーダ(Ensenada)港を拠点とし、そこで日本からの貨物を引き受けてアメリカ全土へ運送するというものです。この港は、ストライキで麻痺しているカリフォルニア州のロサンゼルス港・ロングビーチ港から南へ約四二〇㎞、両国国境を隔ててすぐのところに位置しています。
二〇一五年当時、メキシコ向けの海上運送サービスは、アジア各地の港を経て、アジアのラストポートとして日本へ寄り、その後エンセナーダ港、続いてマンサニヨ(Manzanillo)港へと向かうルートをたどっていました。当時のリードタイム(行程の着手から完了までに要する時間)は、名古屋からエンセナーダまでが約一九~二〇日、マンサニヨまでが約二〇~二一日、横浜からエンセナーダまでが約一二日、マンサニヨまでが約一四日でした。
メキシコ航路を利用する大きな決め手となったのが、リードタイムの遵守率の高さです。この点はサービスを展開する上で非常に重要な点でした。
ただ一方で、メキシコで貨物を降ろす計画に懸念を抱かれたお客様も少なくありませんでした。そうした不安を払拭するため、弊社は詳細な現地情報を適宜、お客様に提供することで対応しました。弊社ではかねてよりこの地域にスペイン語が話せる専任担当者を設け、現地調査を独自に行なってきました。現地の物流に関する情報を運送業者や通関業者から集め、このサービスの確実性や安全性を十分に確認していたのです。そうした積み重ねのおかげで、お客様の疑問に自信を持って答えながら、サービスの提案を進めていきました。
メキシコの港では近年、通関のシステム化が積極的に進められ、輸入申告、港湾諸費用納付、関税の納税・減税・免税、国内運送の実施の仕組みがかなりの部分で改善されました。これは、メキシコ政府が二〇一〇年前後から積極的な外資系企業誘致に乗り出すにあたって行なった改革によるものです。二〇一五年当時、メキシコの港の仕組みが成熟期へ向かっていた点も、弊社にとっては幸いだったかもしれません。メキシコを経由するこの独自のサービスは、コンテナ一本当たり一万ドルを超える費用がかかったにもかかわらず、多くのメーカー(荷主)様から引き合いをいただき、多数の貨物を輸送するに至りました。
通常の運賃に比べると非常に高額ではありますが、ストライキ当時は北米へのもっとも安い輸送ルートでした。これ以外では、航空便(船舶の一〇倍以上の運賃)しか方法がなかったのです。
当時引き受けた品物は、アメリカ国内で生産中の自動車関連の部品や鋼材が大半を占めていました。
これらは自動車を生産する上で重要な供給品であり、これを欠いては産業そのものが成り立たなかったのです。このサービスでは、実際の運送に際して遅延もなく、予定通りの日程ですべての配送を完了させることができました。
この事例のように、さまざまなルートの中から最適なものを選択し、迅速に新たなサービスを構築できるという点は、フォワーダーの強みといってもよいでしょう。
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2019年09月11日
コラム/最適物流の科学㉓
最適物流の科学
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海を駆け巡る「眠らない仕事」』という書籍を出版しました。
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第二十三回となる今回は、「海も陸も、スムーズな連携で荷物を目的地へ」というテーマでお話しいたします。
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「フォワーダーの優位性は、国際複合一貫輸送でより鮮明に」
フォワーダーが特に力を発揮できる分野の一つとして、国際複合一貫輸送があります。国際複合一貫輸送とは、複数の輸送手段を組み合わせて貨物を海外へ運ぶケースを指します。海外に向けてドア・ツー・ドアの輸送を求められた場合、当たり前ですが船だけを使って実行することはできません。船の他に、トラック、鉄道といった陸上輸送を担う手段が必要になるため、その連携がうまくできる事業者が不可欠となります。
国連国際物品複合運送条約(一九八〇年採択)によると、「国際複合運送とは、複合運送人が物品をその管理下に置いた一国のある場所から、荷渡しのために指定された他国のある場所までの複合運送契約に基づく、少なくとも二つの異なった運送方法による物品の運送をいう」と定められています。
つまり、二国間で、単一の運送契約に基づき、二つ以上の運送手段を使って行なわれるものを国際複合運送と呼ぶのです。二つ以上の運送手段とは船舶と鉄道・トラック、航空機と鉄道・トラック、あるいは船舶と航空機といった組み合わせが考えられます。中でももっともメジャーなのが、船舶と鉄道・トラックを使った海陸の一貫輸送です。この形は、コンテナ船の発達とともに普及していきました。
かつては、海外へ貨物を送る場合、運送手段ごとに個別の契約を交わす必要がありました。経由地での通関など煩雑な手続きもあります。これを複合輸送人として一貫して請け負うようになったのがフォワーダーです。もちろん船会社が複合輸送人になる場合もありますが、自社の船舶を使うという制約があるため、陸上輸送との連携が必ずしも最適な流れになるとは限りません。そうした点で、国際複合一貫輸送ではフォワーダーの方に優位性があるといえます。
国際複合一貫輸送においては、複合輸送人が船会社、鉄道会社、トラック運送業者、航空会社などを下請運送人として使用します。複合輸送人は、荷主に対しては、複合運送書類の運送約款に基づき運送責任を負います。
ただ運送約款では複合輸送人が全区間において責任を負う形にはなっていません。陸、海、空の各区間で輸送を請け負う下請運送人との運送約款、およびそれらに適用される国内法、国際条約に準拠して運送責任を負います。
国をまたぐ国際輸送においてもドア・ツー・ドアが定着した現在では、国際複合一貫輸送はむしろ当たり前となっています。輸送コストの削減、手間の軽減、リードタイム(荷受けから荷渡しまでにかかる時間)の短縮が求められる中、国際複合一貫輸送への要望はますます高まっています。
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次回は、「事例から知る緊急対応時の力量」というテーマでお話しいたします。
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