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2019年01月30日
コラム/最適物流の科学②
最適物流の科学
弊社社長の菅が、2017年12月に『最適物流の科学―舞台は3億6106万平方km。
海を駆け巡る「眠らない仕事」』という書籍を出版しました。
そこで、本ブログでも、その書籍から抜粋した内容を
毎週1話ずつ、ご紹介していきたいと思います。
第二回となる今回は、第1章に書かれた商船の歴史とその種類についてご紹介していきます。
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「コンテナ船」
コンテナ船の甲板上に目を移すと、何段ものコンテナが積み上げられている様子がわかります。積載されたコンテナは、赤や青、緑など実にカラフルです。ただしコンテナの規格はほぼ統一されており、これはさまざまな積荷を効率的に輸送するための重要なルールとなっています。この点については四章でも詳しく紹介します。
さらにもう一点を挙げると、ACXクリスタルの船名が報じられた時、「フィリピン船籍」という情報もあわせて伝えられました。
このコンテナ船を運航しているのは日本の大手船会社ですが船籍はフィリピンとなっています。乗務員も20人全員がフィリピン国籍の方々でした。現在、日本の海運を担う船舶の多くは外国船籍で占められていて、多国籍な実情がうかがえます。
外航海運を担う日本商船隊(日本の外航海運会社が運航する商船)のうち、外国船籍は実に九割以上を占めており、国の垣根を越えた協業が日本の海運業の一つの顔といえるのです。この点についても後の章でさらに触れて参ります。
「海路の混雑状況も一目瞭然に」
コンテナ船に注目すると、前述のような海上輸送に関するさまざまな事実が見えてきますが、次はちょっと視点を変えて、コンテナ船を含む船舶の動きを俯瞰してみたいと思います。
インターネットでは、世界中の海を航行する船舶情報をリアルタイムで提供するサービスがあるのをご存知でしょうか。これらは「マリントラフィック(Marine Traffic)」、「シップファインダー(Shipfinder)」などのサービスが知られており、ネット上で無料公開されていることからパソコンやスマートフォンさえあれば、誰でも簡単に閲覧できます。
このネット上のツールを用いると、世界中で航行する膨大な隻数の船舶の運行状況がひと目で把握できます。実際に海上のどの地域間を船が通っているのかを確認でき、これらのサービスにアクセスすると、船舶・貿易のプロではなくても興味深い情報に触れられるのが特長です。
そして同サービスは単に船舶が運行する様子を眺めるためだけに存在するのではありません。船舶それぞれの種類や名称、位置、航行速度、目的地の港といった詳細な情報も提供されることからビジネスはもちろん、幅広い分野での活用が進んでいます。オンライン上で利用できる船舶航行情報は、船がAISを搭載し、運行情報を発信し続けることによって成り立っています。
なお、AISには周辺の船舶を識別し衝突を防ぐなど海上の安全運行を維持するという重要な目的があり、軍艦や漁船などでも用いられる他、義務付けられていない小型船舶においても搭載が推奨されています。
ところで、ネットサービスの地図上で船舶の位置情報を確認していくといろいろな状況が見えてきます。
お盆に高速道路が渋滞するように、海洋の交通にも航路上で船舶が密集する現象が起きているのです。特に沿岸部や海峡ではその傾向が顕著といえます。広大な海洋のフィールドにおいても、船が運航するルートは思いのほか限定されているのです。例えば、日本列島近辺をズームインして眺めてみると、その密集状況には驚かされます。
船舶が多く集まるエリアでは、船同士の接触事故の危険性が高まり、船舶の安全運行上で第一に考慮しなければならないリスクとなっています。残念ながら、先に挙げたような人命に関わる事故も現実に発生しており、海上での船舶衝突は海運業界ではもちろん、世界中の国々が手を携えて解決しなければならない問題ともいえるのです。
「商船の登場と現代におけるその種類」
ここまでコンテナ船を中心に船舶の大きさや動きなどについて見てきましたが、海運を担っているのはもちろんコンテナ船だけではありません。コンテナ船は、あくまでも商船の一種です。ここで、商船全般について確認しておきたいと思います。
海運の起源は古く、紀元前まで遡ります。その中で初めて商船を軍船と区別して扱ったのは、地中海沿岸で栄えたフェニキア人(最盛期:紀元前一二~六世紀頃)だといわれています。以後、商船は時代とともに進化を遂げていきました。
現在、商船は貨物・旅客の運送などを行なう船舶と定義され、利用目的によって旅客船・貨客船・貨物船などに大分類されます。
まず旅客船はその名の通り、旅客の輸送に使用されるものです。我が国でも航空機が発達する前は、太平洋航路や欧州航路など世界各地に向けて旅客船が就航していました。現在では飛鳥のようなクルーズ船が旅客船の代表格のようになっています。
次に貨客船は、貨物と旅客の輸送を同時に行なう船を指します。クルマと旅客を運ぶカーフェリーが代表的なものです。
三つ目の貨物船は、その名の通り貨物を運ぶものですが、貨物の種類によっていくつもの形態に分けることができます。
①一般貨物船
在来貨物船とも呼ばれる、もっともオーソドックスなタイプの貨物船で、機械、食料品、衣類など多種多様のばら積み貨物を運びます。搭載する貨物の種類が幅広いため、汎用性の高い構造になっています。
中には、コンテナを積むことができる多目的船もあります。
②コンテナ船
国際標準化機構(ISO)によって定められた規格のコンテナを専門に運ぶ船です。コンテナの種類には一般的なドライ・コンテナだけでなく、冷凍コンテナやタンク・コンテナなどの特殊コンテナがあります。
またドライ・コンテナのサイズには、20フィート(長さ約6m×幅約2.4m×高さ約2.6m)、40フィート(長さ約12m×幅約2.4m×高さ約2.6m)、40フィートハイキューブ(長さ約12m×幅約2.4m×高さ約2.9m)の3つがあります。
このコンテナ船には、コンテナだけを運ぶフルコンテナ船と、一般貨物も積むことができるセミコンテナ船があります。
③専用船
特定の貨物を運ぶことに特化した船で、種類は多岐にわたります。代表的なものは液体の輸送をするタンカーで、この中には原油を運ぶ原油タンカー、液化石油ガス(LPG)を運ぶLPGタンカー、液化天然ガス(LNG)を運ぶLNGタンカー、化学薬品を運ぶケミカルタンカーがあります。
その他にも、石炭、鉱石、穀物などをばら積みするばら積み専用船、自動車を輸送する自動車運搬船、大型機械などの重量物を運ぶ重量物運搬船など多様な専用船があります。トレーラーをまるごと運ぶRORO船なども専用船の範疇に入れていいでしょう。
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つづく。
次回は、日本の貿易について、ご紹介したいと思います。
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投稿者
ジャパントラスト株式会社
2019年01月23日
コラム/最適物流の科学①
最適物流の科学
弊社社長の菅が、2017年12月に『最適物流の科学―舞台は3億6106万平方km。
海を駆け巡る「眠らない仕事」』という書籍を出版しました。
そこで、本ブログでも、その書籍から抜粋した内容を
毎週1話ずつ、ご紹介していきたいと思います。
第一回となる今回は、コンテナ船について書かれた第1章からご紹介していきます。
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「知れば知るほど興味深い、海運を担う船舶」
海上に出現した横長の巨大ビル―。
あえて形容するなら、そんなところでしょうか。海に浮かんでいるのはコンテナ船。
現代の海上輸送で主翼を担う船です。
重厚なコンテナが甲板上に整然と積まれている様は、まるで一つの建造物のようにも見えます。
岸壁に立ち、初めてコンテナ船を目にした人の多くは、
思わず「でかい」「大きい」といった言葉を口にしてしまうことでしょう。
2017年7月の時点で就航している世界最大のコンテナ船は、約2万TEU。
「TEU」とは、Twenty Feet Equivalent Unitの略で、
20フィートコンテナで換算した単位のことです。
コンテナ船の大きさや港の規模を示すときに使われます。
20フィートコンテナは、長さが20フィート(約6m)、幅が8フィート(約2.4m)です。
面積で考えると約14㎡。これが2万個置かれたとすると、単純計算で28万㎡もの広さになります。
つまり、一隻の船に貨物を積むスペースをこれだけ確保できるということです。
現在、日本でもっとも高いビルは大阪のあべのハルカス(タワー館:高さ300m)です。
その延床面積は約21万2000㎡。2万TEUのコンテナ船には、
これよりも広いスペースを設けられるのです。
あべのハルカスをご存知ない方は、60階建ての超高層ビルをイメージしてみてください。
その地下から最上階までの全フロアが貨物で埋め尽くされているとします。
その夥しい量の貨物が、たった一隻の船に一つ残らず収まってしまうのです。
別の例で比較してみましょう。東京の築地市場の敷地面積は約23万㎡。
この施設の床を埋め尽くすくらいの貨物でも、一隻にまるごと収まってしまうということになります。
さらに、建物の広さの比較対象としてよく用いられる東京ドームの面積は約4万7000㎡。
これと比較すると、前述のコンテナ船にはその約6倍のスペースを設けられるということになります。
これは、あくまでも2万TEUのコンテナ船に、最大積載数まで積んだ場合の
コンテナの総床面積で考えた仮定の話です。
実際にはさまざまな条件が加わるため、コンテナ船とビルのスペースを
単純に比較することはできません。
それでも、コンテナ船がいかに巨大なのかはご理解いただけたのではないでしょうか。
巨大化するコンテナ船と多国籍化するビジネス環境
圧倒的な存在感を誇るコンテナ船ではありますが、
これを実際に間近で目にした経験のある方は決して多くないでしょう。
コンテナ船そのものはもちろん、コンテナ船が実際にどんな風に貨物を積んで、
どんなルートを航行しているかといった情報も、一般の方に伝えられる機会は決して多くありません。
しかし、期せずしてコンテナ船に関する情報が広く報じられるケースがあります。
その代表例として挙げられるのが事故のニュースです。
伊豆半島沖の海域で2017年6月17日未明、コンテナ船とアメリカ海軍のイージス駆逐艦が
衝突する事故が発生し、イージス艦の乗組員七人の命が失われるという大変に痛ましい事態へと
至りました。
連日、この海の衝突事故がマスコミでも報道され、またニュースでは事故の原因や背景についても
詳しく報じられたことで、普段は触れる機会が稀な海運業界の事情について知識を得た方も
多いかと存じます。
この悲惨な出来事を教訓とするとともに、事故の経緯などをひも解いていくことで、
海運に携わる仕事のさまざまな顔、ひいては業界の様子を知る教材とし、話を進めて参ります。
この事例で当該船舶となったのは、コンテナ船ACXクリスタル(ACX CRYSTAL)と
アメリカ海軍のイージス駆逐艦フィッツジェラルド(FITZGERALD)の二隻です。
コンテナ船は、名古屋港から東京港に向けて航行中で、途上の伊豆半島沖は
船舶の過密地帯として知られていました。
この航路は伊勢湾方面と東京湾を結ぶ最短ルートで、一日当たりの通行船舶が
400隻にも達する「海の難所」です。
また伊豆半島沖を含む日本沿岸では、AIS(船舶自動識別装置)搭載船舶だけでも
1日平均で5000隻が通行しています。AISとは、船の運行情報を常時発信する装置のことで、
海上人命安全条約(SOLAS条約)に基づく国内法(船舶設備規定第一四六条の二九)では、
国際航海に従事するすべての旅客船と300総t以上のすべての船舶、また国際航海に従事しない
500総t以上のすべての船舶に対して、その搭載が義務付けられています。
この5000隻の中には商船以外の船も含まれますが、膨大な隻数の船舶が日本の港を
往来しているという現実は知っておいて損はないでしょう。
テレビでの事故報道ではコンテナ船の映像が度々流れましたが、そのスケール感は圧倒的でした。
コンテナ船のACXクリスタルは、全長222.6m、総トン数2万9060tに達します。
それに対しイージス艦は、全長154m、総トン数8315tの規模ですが、
イージス艦は決して小さいわけではないのです。
ただ、それ以上にコンテナ船が巨大なのだと捉えるのが正解です。
しかし驚異なのは、このコンテナ船も同種の船舶では特別に規模が大きいというのではない
という事実です。今日では全長四〇〇mクラスのコンテナ船も登場しています。
先に紹介した世界最大のコンテナ船がまさにこのサイズなのです。
想像を超える大きさの巨大コンテナ船が、日本近海だけでなく世界中の海で日々活躍しているのです。
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つづく。
次回は、商船の歴史とその種類について、ご紹介したいと思います。
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投稿者
ジャパントラスト株式会社